風邪やインフルエンザが肺炎のきっかけになることも-国保でHOT情報2017年1月号-
日本人の死因の第3位である肺炎。からだの抵抗力(免疫力)が弱まったときなどに感染を起こしやすく、普段、元気に暮らしている方でも、持病の悪化や体調不良などをきっかけに感染する病気である。そこで、国保でHOT情報では肺炎について、鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科呼吸器内科学 助教の寒川卓哉先生にお話を伺い、12月14日にお伝えしました。
肺炎は老人の友
肺炎はどのような病気ですか
寒川先生
肺炎とは肺に炎症が起きる病気のことをいいます。肺炎には微生物を吸い込んで発症する細菌性肺炎、ウイルス性肺炎、真菌性肺炎などの感染症と、薬剤性肺炎やアレルギー性肺炎、間質性肺炎などの非感染性肺炎があります。一般に肺炎というと、前者の感染性肺炎のことをいいます。
肺炎の原因にはどのようなものがありますか
「健康で体力のある状態を保ち、手洗いやうがいなどで気道感染を防ぐことが大切」と話す寒川卓哉先生 |
寒川先生
肺炎をおこす原因となる微生物は以下の大きく三つに分けられます。
- ウイルス:インフルエンザウイルス、アデノウイルス、麻疹ウイルス、サイトメガロウイルスなど
- 細菌:肺炎球菌、ぶどう球菌、インフルエンザ菌
- 真菌:(カビのことです)
肺炎はどのくらいの頻度でおこりますか
寒川先生
日本では年間約12万人が亡くなる病気とされています。平成23年以降の本邦の死因別統計では〝がん〟〝心疾患〟についで第3位となっています。肺炎で亡くなる方の95%以上が65歳以上であり〝肺炎は老人の友〟という言葉もあるくらいです。
治療の基本は安静、保温、水分補給
どのような症状があれば肺炎を疑うべきですか
寒川先生
典型的には、咳、黄色っぽい痰、38℃以上の高熱がありますが、インフルエンザや風邪との判別が難しいこともあります。重症になると呼吸困難や脱水症状もみられます。
ただし、このような症状を必ず伴うとは限らず、高齢者では食欲がなくなったとか元気がないなどが肺炎の唯一の症状であることがあり、注意が必要です。
肺炎の診断はどのようにされますか
寒川先生
咳・痰・発熱・息切れなどの呼吸器症状から肺炎を疑い、診察に加えて、血液検査、胸部レントゲン検査が一般的に行われます。胸部レントゲン検査では発見困難で胸部CTで肺炎像が指摘されることもあります。喀痰検査は原因微生物同定や薬剤感受性評価のために行われます。
肺炎の治療法について教えてください
寒川先生
安静、保温、水分補給を基本とし、肺炎の原因微生物に対して治療を行います。細菌や真菌に対しては抗菌剤(抗生物質)による化学療法を行います。一部のウイルスに対しても抗ウイルス薬があります。脱水は肺炎を重症化させますので、食事が十分とれない患者さんでは補液も重要です。その他、症状を和らげるために、咳止めや痰を出しやすくする去痰剤、熱をさげる解熱剤などで対応します。
手洗いやうがいで気道感染を防ぐ
肺炎の予防は可能ですか
寒川先生
完全な予防法はありませんが、健康で体力のある状態を保ち、風邪やインフルエンザ対策と同じく、手洗いやうがいなどをして気道感染を防ぐことが大切です。インフルエンザウイルスのあとの「2次感染」としての肺炎も知られています。肺炎で亡くなる方の95%以上が65歳以上であることから、平成26年10月から肺炎球菌ワクチンによる初回定期接種の公費助成制度が始まりました。65歳になる年齢から肺炎球菌ワクチン接種が薦められています。
65歳未満であっても、慢性の病気や免疫力が低下して感染症にかかりやすい状態にある方に対しても推奨されます。肺炎球菌ワクチンは〝肺炎球菌〟に対しての効果は期待できますが、全ての肺炎に効果が期待できるものではありませんので、日ごろから健康を意識しておくことが大切です。