ジェネリック医薬品の普及が医療費適正化に繋がる-国保でHOT情報2017年5月号-
ジェネリック医薬品の利用促進に国も積極的に取り組んでいる。利用が増えた市町村には、医療費の適正化に取り組んでいると評価して、国から特別調整交付金の交付が行われる。その特別交付金は、被保険者の国保税に反映されるため、ぜひジェネリック医薬品を利用していただきたいものだ。そこで、国保でHOT情報では「ジェネリック医薬品」と健康に関して気軽に相談できる「かかりつけ薬局・薬剤師」について、公益社団法人鹿児島県薬剤師会の常務理事で、アクア薬局川内の御手洗洋一先生にお話を伺い、5月3日と5月10日の2週にわたって伝えた。
国の医療費と患者の自己負担を減らす一石二鳥の取り組み
ジェネリック医薬品とは?
御手洗常務理事
ジェネリック医薬品とは効き目や安全性が従来の医薬品、つまり先発医薬品と同じであると国が認めた医薬品です。 いわゆる偽ブランドや偽薬などとは違い、国が定める厳しい基準に適合した正式な医薬品のことです。
なぜジェネリック医薬品の普及が推進されているのでしょうか?
御手洗常務理事
日本は超高齢化社会を迎え、増え続ける医療費が国の財政を圧迫しています。医療の質を落とさずに、医療費を削減する方法の一つとして、ジェネリック医薬品が推奨されています。ジェネリック医薬品が普及すると、国の医療費はもちろん、患者さんの自己負担を減らすこともできますのでまさに一石二鳥の取り組みと言えます。
原料は質の悪いものを使っていると心配する方もいるようですね。
御手洗常務理事
まずは、先発医薬品と効果が異なる粗悪な原料を使ったものが、医薬品として認可されることはありません。実際にすべてのジェネリック医薬品が、先発品と同じかそれ以上であることが審査された後に、製造・販売されていますのでご安心ください。
効き目が同じなのに、なぜ価格が異なるのでしょうか?
御手洗常務理事
これまで広く使われた医薬品の中で、使用実績が豊富で安全な成分についてのみが、ジェネリック医薬品として販売されています。すでに多くの方に使われ、安全性が確認されているため、医薬品の研究・開発コストを安く抑えられ、結果的にお薬の価格が安くなっています。
すべての医薬品に対してジェネリック医薬品を選ぶことができるのでしょうか?
御手洗常務理事
医薬品によっては、まだジェネリック医薬品が販売されていないものもありますが、高血圧、高脂血症、糖尿病などの代表的な生活習慣病をはじめ、いろいろな病気や症状に対応しています。また、新しい薬でも一定の特許期間が過ぎれば、今後開発される可能性が高いと言えます。
変更することのメリットは?
御手洗常務理事
ジェネリックをおすすめする一番の理由は、効き目が同等であるにもかかわらず、患者さんの自己負担が軽減されることです。また、それ以外にも味や匂いが工夫されたり、大きさや形状が飲みやすくなったものもありますので、お薬の種類が多い方や小さなお子様にもおすすめです。
ジェネリック医薬品を使いたい場合はどこで変更できますか?
御手洗常務理事
ジェネリック医薬品を処方してもらうには、実際にお薬をもらう薬局でお尋ねください。処方した医師の確認が必要な場合は、患者さんの希望を確認した上で医師に問い合わせる場合もあります。また別のジェネリック医薬品や先発医薬品を希望される場合も、遠慮なく薬剤師へお声掛けください。
健康に関して気軽に相談できる薬局・薬剤師
かかりつけ薬局・薬剤師とは、どのようなものなのでしょうか?
御手洗常務理事
〝かかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師〟とは、お薬の服用や管理をはじめ、健康全般の相談ができる薬局や薬剤師のことです。普段飲んでいるお薬のこと以外にも、急な体調変化や市販薬との飲み合わせ、あるいは栄養相談・介護の問題など、健康に関するあらゆる相談に応じています。また内容によってより詳しく相談できる病院や窓口の紹介も行っています。
何種類もの薬を飲んでいる方にとって、いつでもすぐに相談できる薬剤師がいるのは心強いですね。
御手洗常務理事
はい。特に複数の病院へおかかりの方、のみ忘れが多い高齢者の方などには信頼できる〝かかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師〟を見つけてもらいたいと思います。最近の研究で、飲んでいる薬が6つ以上になると急に副作用が出やすくなることが知られています。特に同じような薬を重ねて飲んでいる場合は、患者さんの希望に応じて医師と相談の上、数を減らしてもらうこともできます。
ふだん病院でお薬をもらっている方のみが対象となるのでしょうか?
御手洗常務理事
いいえ。病院のお薬がなくても、健康や病気に関する相談はいつでも行っています。特に、軽い怪我や初期の風邪などの場合は、病院へかかる前に市販薬で対応が可能な場合がありますので、まずは相談ください。当然、症状によっては適切な診療科への紹介も行います。
市販薬の購入で税の優遇も
最近は市販のお薬を買うと税金が安くなる制度があると聞いたのですが…
御手洗常務理事
今年からセルフメディケーション税制がスタートしました。自主的な健康管理に取り組む方を支援するために、市販薬を購入した割合に応じて税金の一部が戻ってくる制度です。薬局でもセルフメディケーションを積極的に支援しています。ただし、申請には一定の条件がありますので詳しくは、近くの薬局でお尋ねください。
かかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師を持つ上でのポイントは?
御手洗常務理事
まずは、普段からお薬手帳を通して自分の体質や飲んでいる薬をしっかり把握することが重要です。目薬や湿布薬といった、些細なことでも非常に重要な情報が隠れている場合がありますので、お薬手帳は一冊にまとめて、毎回お持ち頂くようにお願いしています。
地域住民の健康をサポート
まだ、かかりつけ薬局を持たない方に何かアドバイスがありますか?
御手洗常務理事
最近は地域住民に対して簡単な健康測定や健康にまつわるイベントを開催している薬局も増えてきました。現在通っている薬局がない場合は、そうしたイベントに参加してみるのも一つの方法です。昨年、健康増進の取り組みを積極的に行う「健康サポート薬局」という制度もはじまりました。これからかかりつけ薬局を見つけようという方は一つの目安にしてみてはいかがでしょうか?
御手洗洋一常務理事 |