世界遺産の島 屋久島で集落めぐり~安房編~
世界自然遺産の屋久島は「洋上アルプス」とも表現されるように、九州最高峰の山々が連なる神秘の島である。その島の玄関口のひとつであり、屋久島観光のメッカ・縄文杉への登山の玄関口にもなっている港町・安房集落には、屋久島の魅力がぎゅっと詰まっている。また集落は、屋久島では四大河川のひとつである安房川の河口にあることから、山からの杉などが運び込まれる場所でもあった。どの季節も素晴らしいが、特に春から初夏にかけての屋久島は、植物も美しいということで最初のお散歩は、屋久島からお送りしたい。
森林管理署
安房集落は、林芙美子の代表的な小説のひとつである「浮雲」の舞台にもなった場所でもある。林芙美子自身も取材で、現在の森林管理署も訪れている。その当時は屋久島より以南はアメリカ軍政下にあり、国境の島でもあった。
如竹廟(じょちくびょう)
ここに祭られているのは「屋久島聖人」ともいわれる泊如竹という江戸時代の儒学者で、屋久島の杉の伐採について岳の神様と相談したともいわれる人物である。また薩摩藩の藩主や琉球王に仕えたこともあるなど全国にも知られた学者でもあった。亡くなったとされる旧5月25日には地域の人々によって「如竹踊り」が奉納される。
如竹堀(じょちくぼり)
泊如竹は、豊富な学識を地域に活用している。そのひとつが集落に安定した水を供給した堀である。背後の丘陵地域から豊かな水を集落へと供給するために堀の存在は不可欠であった。素朴なかたちではあるが、一部ではあるが当時をしのばせてくれる状況で現存している。
粟穂神社と本仏寺
安房集落を一望できる見晴らしのいい場所には、粟穂神社がある。この神社は、ヒコホホデノミコトなどを祭る。現在では安房という地名だが、元々は神社名である「粟穂」と呼ばれていた。隣接の法華宗本仏寺は、織田信長が討たれた京都の本能寺とつながりがある由緒あるお寺である。
若宮神社
御祭神は不明だが、地域では火の神様として大切にされて来ている。現在でも地域の火災見回りでは、この神社前が出発場所になっているという。元々は背後の小高い丘陵が安房城と呼ばれる山城であったが、その場所にあったものという。
大石亀女の石
里町には亀女なる人物が機織りをしたという大石が安房川の岸にある。おそらく石はカコウ岩であり、川の上流から運ばれてきたものと推測される。ただ、この石の上での機織りは少し不自由そうだ。
東川隆太郎 プロフィール
【職歴・略歴】
NPO法人まちづくり地域フォーラム・かごしま探検の会代表理事。「まち歩き」を活動の中心に据え、地域資源の情報発信や、県内及び九州各地での観光ボランティアガイドの育成・研修、まちづくりコーディネートなどに従事する、自他ともに認めるまち歩きのプロ。
主なテーマは、地域再発見やツーリズム、さらに商店街やムラの活性化など。講演活動、大学の非常勤講師などを通しての持論展開のほか、新たな地域資源の価値づけとして「世間遺産」を提唱するなど、地域の魅力を観光・教育・まちづくりに展開させる活動に従事している。1972年鹿児島市生まれ。鹿児島大学理学部地学科卒。