冷汗を伴う激しい胸部痛が持続する場合は早急に受診を ※急性心筋梗塞 -国保でHOT情報2017年9月号-
急性心筋梗塞は心臓に血液を送る血管(冠動脈)が突然詰まる病気。およそ3人に1人は、全く前兆(狭心症)なしに発症します。突然死の原因にもなりますので、その症状を知り、初期の対応を誤らないことが大切です。そこで、国保でHOT情報では急性心筋梗塞について、たちばないいやまクリニックの橘裕紀副院長にお話を伺い、7月12日にお伝えしました。
命に関わる重篤な病気
急性心筋梗塞とはどういった病気ですか?
橘先生
「心筋梗塞の予防には生活習慣の改善が |
まず、心臓の構造を少しお話します。心臓はいろいろな臓器に血液をおくるポンプとして働いています。心臓の筋肉(心筋)も動くためには血液(酸素)が必要なわけです。心臓の筋肉に血液を流しているのが、心臓の表面を走っている冠動脈です。この冠動脈が詰まると、心臓の筋肉に血液が流れなくなり心臓の筋肉が壊れていきます。これが心筋梗塞です。
狭心症とはどうちがうのですか?
橘先生
狭心症の場合は、心臓の筋肉の一時的な血液不足(酸素不足)により胸部症状を生じるもので、心臓の筋肉は壊れません。
一方、心筋梗塞は、冠動脈の閉塞により心臓の筋肉は持続的酸素不足の状態となり、心臓の筋肉が壊れます。心臓の筋肉が壊れるため、重篤な不整脈・血圧低下等の合併症が生じ、命に関わる重篤な病気です。(図表1)ただし、狭心症の中でも、胸部症状の頻度・持続時間が増加したり、労作性から安静時にも症状が出現するようになってきた場合には、不安定狭心症と呼ばれ、急性心筋梗塞を生じやすい状態と考えられます。(図表2)
図表1 |
図表2 |
心筋梗塞にはどのような症状があるのでしょうか?
橘先生
焼けた火箸で胸を刺されるような激しい胸痛が数時間(平均4時間程度)続きます。さらに、不整脈による動悸や意識消失発作、心不全を生じますと呼吸困難になったり、重篤になると血圧低下・心停止も生じます。なかには、痛みを全く感じない心筋梗塞もあり、糖尿病の患者さんや高齢者に多いといわれています。
心筋梗塞はどのように診断されるのですか?
橘先生
ECG・心エコー検査等を行い、血液生化学検査にて心筋の壊死が証明されれば、心筋梗塞と診断されます。心筋壊死の証明として、心臓の細胞に含まれる酵素(心筋逸脱酵素)の上昇が確定診断になります。代表的なものに、CPK‐MBや心筋トロポニンがあります。
症状出現後の早期搬送と正確な診断が鍵
急性心筋梗塞の治療法を教えてください。
図表3 |
橘先生
症状出現後早期(特に6時間以内)であれば、詰まった冠動脈の血流を再開させるための再灌流療法が行われます。風船で閉塞した部位を拡げたり、STENTという金属のメッシュ構造のものを留置したりします。(図表3)血流れの再建が得られると、心筋壊死の範囲が少なくて済み、予後の改善に役立ちます。その後は、冠動脈疾患集中管理室(CCU)にて、不整脈や心不全等の管理を行います。経過が良ければ、心臓リハビリテーションを行い、10日前後での退院が可能です。
心筋梗塞の予後はどうなりますか?
合併症に左右されます。通常、病院搬送までに10~20%の人が命を落とすといわれています。心筋壊死に伴う不整脈・心不全による死亡例が多いのですが、再灌流療法により、死亡率は2~3%前後まで改善されています。とにかく、冷汗を伴うような激しい胸部痛が持続する場合は、早急に救急車を要請し、循環器専門施設へ搬送してもらい、正確な診断を受け、冠動脈造影検査を施行し、詰まった血管を通す再灌流療法を行うことが、予後の改善につながります。
生活習慣の改善が重要
心筋梗塞にならないためには、どうすればいいでしょうか?
図表4 |
一般的な動脈硬化の危険因子である①高血圧、②糖尿病、③脂質異常症、④高尿酸血症等の加療を行い、禁煙・肥満・ストレス・運動不足の解消など、生活習慣の改善を行うことが重要です。(図表4)