糖尿病の怖さを知り、相談できるかかりつけ医を持ちましょう ※糖尿病 -国保でHOT情報2019年3月号-
糖尿病は高血糖の状態が長く続くことでさまざまな合併症を引き起こします。また重症化により、他の病気を起こすリスクも非常に高くなる怖い病気です。
そこで、国保でHOT情報では「糖尿病」について、いづろ今村病院名誉院長で慈愛会糖尿病センターセンター長の鎌田哲郎先生にお話を伺い、3月2日にお伝えしました。
重症化するまで自覚症状が現れない合併症
糖尿病とは、どのような病気で、なぜ治療が必要なのですか。
図1 |
鎌田先生
糖尿病になると、血液中のブドウ糖濃度が高い状態が長期にわたり続きます。その結果、全身の血管と神経が障害され合併症が起こってきます。(図1)失明や腎不全による血液透析、動脈硬化による心筋梗塞や脳卒中、足切断などがあります。また、歯周病やある種のがん、認知症も起こりやすくなります。しかし、これらは、治療をきちんと続けることで防ぐことが可能です。
治療を続けることが大切というお話ですが、自分が糖尿病であることを知っていても、治療を受けていない方も少なくないと聞きますが。
鎌田先生
糖尿病で未治療の方が、全体でおよそ25%近くいると報告されています。(図2)女性は全般的にやや多く、男性の働き盛りの年齢層ではおよそ半数が未治療です。この中から将来、合併症に苦しむ方が出てくる可能性が考えられます。
図2 |
重大な病気なのに、なぜ多くの人が治療せずにいるのでしょうか。
図3 |
鎌田先生
糖尿病の合併症は、重症化するまで自覚症状はなく、長い期間無症状で経過します。そのため、自覚症状に気づいた時には、取り返しのつかないところまで進んでいる場合が少なくありません。
(図3)放置や治療中断の理由として、仕事や家庭の事情で忙しいというのが最も多く、また体調が良いのでとか、経済的な理由もあります。
定期的な検査と治療の継続が重要
「糖尿病の未治療・治療中断は取り返しのつかない状態を招く怖れがある」と語る鎌田哲郎名誉院長 |
どうすれば、解決できるのでしょうか?
鎌田先生
糖尿病の合併症について知ること、また糖尿病の状態は、検査でしかわからないことを理解し、定期的な検査と治療の継続が重要です。時間がない場合は、いつでも受診できる、かかりつけ医を持ち、専門施設と連携を取りながら診てもらうのが良いと思います。また経済的な問題は、遠慮なく主治医の先生や看護師さんに相談してください。
行政としてはどのような取り組みがなされているのでしょうか?
鎌田先生
2017年から特定健診のデータと国保のレセプトを基に、糖尿病未治療者、重症化リスクの高い人を見つけて、保健師が手紙や直接訪問で受診の呼びかけを行っています。(図4)
図4 |
鹿児島市では、未治療の方249人に受診勧奨を行い、およそ7割の方がその後受診するようになっています。(図5)このような介入を行った方では、血糖値の指標であるHbA1c値の改善や減量効果が見られています。
図5 |
合併症に苦しまないためには、糖尿病の怖さを知り、治療を継続していくことが重要ということですね。そのためにはいつでも診てもらえ、相談が出来るかかりつけ医を持つことも重要ということですね。
鎌田先生
その通りです。