生活習慣の改善で血圧を正常化について-国保でHOT情報2015年1月号-
高血圧は、心血管病や脳卒中の危険因子として最も大きなウエートを占めており、ある調査によると糖尿病の4倍、喫煙の倍程度の危険性があるとされています。そこで今回は、高血圧の予防に向けた生活習慣の改善などのお話を鹿児島大学大学院心臓血管高血圧内科学の大石充教授に伺い、11月19日にお伝えしました。
心血管病や脳卒中の危険因子として大きなウエートを占める高血圧
新聞などで血圧の基準値が上がったと聞いたのですが、適正な血圧はいくらくらいでしょうか
大石教授
人間ドック学会より上が147(147mmHg)以下が基準血圧であると発表されましたが、将来の脳卒中や心血管系疾病の発症予防を考えた血圧ではありません。日本高血圧学会ガイドラインで、一般的には上が140、下が90(140/90mmHg)未満、よりリスクの高い糖尿病や蛋白尿を伴った慢性腎臓病を合併した患者さんは上が130、下が80(130/80mmHg)未満、75歳以上の後期高齢者は上が150、下が90(150/90mmHg未満)と決められています。
血圧が高いとなぜ治療しなくてはいけないのですか
大石教授
心血管病や脳卒中の危険因子として高血圧は最も大きなウエートを占めており、ある調査によると糖尿病の4倍、喫煙の倍程度の危険性があるとされています。また、壮年期から血圧を正常に保っておくと認知症発症予防に繋がることも分かっています。高血圧そのものにはあまり症状はありませんが、将来の脳卒中や心血管系疾病、認知症発症予防のためにも早めに高血圧の治療をしておくことが肝心です。
高血圧が発症しやすい要因は悪い生活習慣
高血圧は遺伝するのですか
大石教授
一つの遺伝子の異常により高血圧となるような遺伝は非常にまれですが、血圧が上がりやすい体質の一部は遺伝します。また、食べ過ぎや塩分の摂り過ぎといった悪い生活習慣を家族で共有していることも家族間で高血圧が発症しやすくなっている要因です。
降圧薬を飲み始めると一生飲まなくてはいけないのですか
大石教授
生活習慣の改善などで血圧が正常化すれば降圧薬を飲む必要はありませんが、血圧を正常化することが目的なので、それが達成できなければ、降圧薬の助けを借りることになります。
血圧が少し高い方が調子がいいという方もいらっしゃると聞きますが
大石教授
高血圧に慣れていますと交感神経活動が亢進して血圧が少し高い方が元気な気がしますが、そのままにしておくと血管系の病気になりやすくなりますので、将来を考えたら適切な血圧にすべきです。
正しい測り方で食生活の見直しを
家庭用の血圧計も普及しているようですが、測る時間や測り方はどのようにしたらいいでしょうか
大石教授
家庭血圧は非常に重要なので、毎朝、起きて用を足した後に測定するといいでしょう。 機器の種類や方法もいろいろありますので、かかりつけ医に測定の仕方を十分に教えてもらいましょう。測り方が正しくて、朝の血圧が高い場合には、塩分を多く摂っている場合がありますので、自分の食生活を見直してみましょう。
血圧を下げる食べ物ってあるのでしょうか
大石教授
果物や野菜といったカリウムやマグネシウムなどを多く含む食べ物は、体内のナトリウムを排泄させてくれて、減塩と同じ効果があります。
血圧を下げるには生活習慣を変えるといいと耳にしますが、具体的にどうしたらいいのですか
大石教授
ノ血圧を下げるのに一番効果的なのは減量なので、腹八分目に食事を抑えて、さわやかな汗をかくくらいの適度の運動が良いでしょう。また、塩分を押さえることも効果的です。尿検査をすることで自分がどれくらい塩分を摂っているかが分かるので、かかりつけ医で測定してもらって、自分の塩分摂取量を把握しましょう。その上でお漬け物や練り物、麺類などを控えて、薄味に心がけましょう。