早期診断・早期治療で糖尿病の重症化・合併症を予防しよう ※糖尿病について -国保でHOT情報2019年11月号-
現代社会において、 糖尿病の予備群は水面下で増えていると言われています。糖尿病とその予防について、正しい生活習慣の大切さを再認識するために「糖尿病」について、鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 糖尿病・内分泌内科学 助教 出口尚寿先生にお話を伺い、11月9日にお伝えしました。
自覚症状が少ない糖尿病
糖尿病とはどんな病気ですか?
出口先生
糖尿病は、インスリンというホルモンの分泌が悪くなったり、インスリン抵抗性といってインスリンの働きが悪くなることによって血糖値が上昇する病気です。
加齢、遺伝、肥満、生活習慣などが誘因となって発症します。
自覚症状が少ないので、多くの患者さんは検診などで糖尿病を疑われて、医療機関で検査を受けて診断されます。
症状がないからといって放置していると気づかないうちに全身に様々な合併症が生じます。
糖尿病三大合併症
糖尿病の合併症にはどのようなものがあるのですか?
出口先生
- 両足にしびれや痛みを生じたり、体の調子を整える自律神経のはたらきが悪くなる神経障害。
- 視力低下を来たし、失明にも至る網膜症。
- 腎機能が低下して疲れやむくみが生じ、悪化すると透析が必要になる腎症。
これらは、血糖コントロールが適正に行われなければ発症するため、「糖尿病三大合併症」と呼ばれます。
また、糖尿病は動脈硬化を促進するので、心筋梗塞や脳梗塞、末梢動脈の閉塞や壊疽(えそ)など、深刻な病気の原因になり、歯周病や水虫などの感染症にもかかりやすくなります。
その他、糖尿病では認知症や、肝臓がん、すい臓がん、大腸がんを発症するリスクが糖尿病でない人よりも高いことがわかっています。
肥満にならない生活習慣が重要
糖尿病の重症化を予防するためにはどうしたら良いでしょうか?
出口先生
肥満にならない生活習慣が大切です。
1日の必要エネルギー量の範囲で炭水化物、蛋白質、脂質をバランスよく摂る食事 療法が有効です。また、運動療法によりインスリンの働きが良くなります。
まずは日常生活で歩くことを心がけましょう。食後に体操やスクワットなどを行うのも有効です。
大切なのは、少しずつでも継続して行うことです。
食事・運動療法で血糖コントロールができなくても、飲み薬やインスリン注射などの治療を医療機関できちんと行えば、合併症を防ぐことができます。
重症化・合併症を予防するために
最後に先生からのメッセージをお願いします。
肥満にならない生活習慣が大切と話す出口尚寿先生 |
出口先生
糖尿病は、早期診断・早期治療により、その重症化や合併症が予防できます。
- 特定健診を受けること
- 生活習慣に問題があれば改善に努めること
- 糖尿病と診断されたら医療機関を受診し治療を受けること、そして
- 治療を始めたら中断しないことが大切です。