早期発見・早期治療で新たな透析患者の予備群を減らす-国保でHOT情報2013年1月号
●慢性腎臓病の症状、予防法
鹿児島県の透析患者は、人口327人に1人と全国平均よりもかなり多い状況です。そのため、透析患者の予備群である慢性腎臓病の早期発見・早期治療が医療費抑制にも繋がると考えられます。そこで「国保でHOT情報」では、慢性腎臓病の具体的な症状や、日頃の食事において可能な予防法等について、鹿児島大学病院腎臓・泌尿器センター腎臓内科の野﨑剛先生にお話を伺い、12月12日にお伝えしました。
慢性腎臓病は透析患者の予備群
慢性腎臓病とは、どのようなものでしょうか?
野﨑先生
慢性腎臓病は、3ヵ月以上蛋白尿や腎機能異常が続く状態で、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、腎硬化症などいろいろな疾患を含んでいます。
なぜ慢性腎臓病が重要かというと、慢性腎臓病はただ腎臓が悪いというだけでなく、我が国の死因の2番、3番を占める心血管系疾患の重要な危険因子であることが明らかとなったからです。心血管系疾患対策の上でも慢性腎臓病を減少させることが重要です。
慢性腎臓病は進行すると末期腎不全となり、透析療法が必要となります。現在日本の慢性透析患者数は30万人を超え、国民の420人に1人が透析療法を受けており、今後も増加が予想されます。透析患者さんの生命予後は一般人の50%でしかなく、また透析医療費の増加が国民全体の医療費を圧迫することから、新たに透析が必要となる方を減らす必要があります。
慢性腎臓病が透析患者の予備群になると話す。 |
鹿児島県の状況はいかがでしょうか?
野﨑先生
透析患者さんは2011年末で5189名の透析患者さんがおられ、人口327人に1人と、全国平均よりもかなり多いです。鹿児島県での詳細なデータはありませんが、透析患者の予備群である慢性腎臓病患者さんも多いと予想されます。
生活習慣の改善で予防を図る
年々増えている慢性透析患者。鹿児島県では、327人に1人が透析患者にと話す野﨑先生。 |
どのような症状があるのでしょうか?
野﨑先生
困ったことに、慢性腎臓病の段階では自覚症状は全くありません。症状が出てくるのは透析に近くなってからで、倦怠感や食欲不振などが症状となります。
治療方法は、どのようなものでしょうか?
野﨑先生
慢性腎臓病のもとの病気に対しての治療が主体となります。糖尿病なら糖尿病の治療や高血圧の管理、慢性糸球体腎炎ならその治療になります。早期に治療を行えば、完全によくなる場合もあるので、早めに医療機関に行くのが重要です。
どのように予防すればいいのでしょうか?
野﨑先生
慢性腎臓病の原因を考えると、糖尿病や腎硬化症など、まずは食べ過ぎや塩分の取りすぎには気を付けることです。また腎臓病の患者さんは蛋白制限をすることが多いのが特徴ですが、これはその患者さんによってもことなりますので、医師にご相談下さい。
検診で早期発見相談を
どのようなことに気をつければいいのでしょうか?
野﨑先生
検診で尿蛋白が発見された場合には早めに医師にご相談下さい。血清クレアチニンという値がありますが、これは正常で男性が0・7~1・1、女性で0・4~0.7となっていますが、これが正常上限の場合にはすでに腎機能が60%くらいに落ちているので注意が必要です。検診でクレアチニンを測定されていないこともあり、腎機能がかなりおちてから気づかれるというケースも見られます。
最近ではeGFRという年齢や性別で補正をかけている値があり、一般の方でも腎機能がわかりやすいですので、この値に気を付けて下さい。