薬剤師がサポート 正しい薬の服用で体調の改善を-国保でHOT情報2013年3月号
●ジェネリック医薬品と薬剤師の在宅訪問
国が使用を推奨しているジェネリック医薬品。医療費を抑制することができ、私たちが納めている健康保険料の上昇を抑えることにもつながります。HOT情報ではジェネリック医薬品についてお伝えしました。
そして、在宅で療養する患者さんのための薬剤師による在宅訪問について、(公社)鹿児島県薬剤師会常務理事で青空薬局の岩元暢秀先生にお話を伺い2月6日と13日の2週にわたってお伝えしました。
有効成分は、先発医薬品と全く同じジェネリック医薬品
「ジェネリック医薬品の有効成分は、先発医薬品と全く同じもの」と話す、岩元先生と藏薗千尋リポーター |
ジェネリック医薬品とはどのような医薬品なのでしょうか?
岩元先生
簡単に申しますと、先発医薬品の特許期間が終了した後に同じ有効成分を使って同じ効き目、安全性となるように作られたお薬のことです。
病院など医療機関で使用される「医療用医薬品」には、先発医薬品と後発医薬品とがあります。
新薬である先発医薬品には特許があります。20~25年して特許が切れたのちに同じ有効成分を使って別のメーカーから発売される医薬品が後発医薬品です。後発医薬品のことをジェネリック医薬品と呼んでおります。
どうしてジェネリック医薬品というのですか?
岩元先生
ジェネリックとは英語で「一般的な」という意味ですが、欧米では後発医薬品は製薬メーカーがつけた商品名ではなく、薬の有効成分名である「一般名」で処方されることが多いため、ジェネリック医薬品と呼ばれています。
先発医薬品とジェネリック医薬品との違いはなんでしょうか?
岩元先生
もっとも大きな違いは、その価格にあります。
医薬品の種類によって違いますが先発医薬品の3割、中には5割以上安くなるお薬もあります。
どうしてジェネリック医薬品はそんなに安いのでしょうか?
岩元先生
1つの新薬を開発するのには9~17年、その費用は約300億円以上ともいわれています。
一方ジェネリック医薬品は開発期間が3~5年で済み、研究開発費用も約1億円と大幅に削減できるため、価格を安く抑えることができるというわけです。
安くなっても安全性や品質は大丈夫なのでしょうか?
岩元先生
ジェネリック医薬品の有効成分は、先発医薬品と全く同じものです。添加物や剤型などが異なる場合もありますが、様々な試験によって同等であると認められたものしかジェネリック医薬品として発売されません。さらに、先発医薬品と同様に厳しく管理された規制のもとで製造されていますので、品質、有効性及び安全性に大きな違いはありません。
保険料の上昇を抑える
なぜ、ジェネリック医薬品の使用を勧められるのですか?
岩元先生
国が医療費を抑制する目的で、ジェネリック医薬品の使用を推奨しているからです。
アメリカ、イギリス、ドイツなどでは6割以上がジェネリック医薬品となっています。それに比べ、我が国のジェネリック医薬品のシェアはまだ低い状況です。
国の医療費を減らして、今後も国民皆保険制度を維持していくためにも、より一層推進していくことが必要だと考えられています。また、そうすることで、私たちが納めている健康保険料の上昇を抑えることにもつながります。
ところでジェネリック医薬品を希望したいときは、どのようにすればよいのでしょうか?
野﨑先生
かかりつけの医師または薬剤師にお気軽にご相談ください。保険薬局にて処方せんを提出するときに「ジェネリックにしてください」とお伝えくださるだけでもよろしいかと思います。
最後に、どんな薬でもジェネリック医薬品にかえてもらえるのでしょうか?
野﨑先生
全ての先発医薬品に対してジェネリック医薬品があるわけではありません。
また、処方医が「変更する事が好ましくない」と判断した場合は、変更ができない旨の指示が処方せんに記載され、変更できないこともあります。
現在服用している薬については、薬局でお渡しする薬剤情報提供文書に、その医薬品がジェネリック医薬品に変更可能かどうか、変更した場合どのくらい安くなるのかなどの情報が記載されておりますので、参考にされたらよろしいかと思います。
在宅における服用管理
「薬剤師の在宅訪問」とはどのようなものなのでしょうか?
岩元先生
薬局へお薬を取りにいけない方が、在宅で医療を受ける際に、薬剤師が患者さん宅を訪問し、お薬についての説明や管理などのお手伝いをすることです。
具体的には、きちんと飲めているかどうかなどを確認し、きちんと飲めていない場合、その理由を探り、改善のための対策を行います。
お薬の整理がつかない、何の薬かわからない、副作用が怖い、自分勝手に止めてしまっている、飲み込めないなどの問題を解決し、きちんと服用できるようにいたします。
それから、薬の作用・副作用によって、もしくは飲み合わせによって患者さんに悪い影響を与えていないかを薬学的知識により評価し、主治医や訪問看護師やケアマネジャーと連携し、改善を図ります。
お薬の整理もしてくださるのですね?
岩元先生
実際に患者さんの自宅にお伺いすると、山のような飲み残しの薬があって、どれを服用してよいのかわからなくなったというケースに遭遇することがあります。
これを薬剤師が、必要な薬を整理し、一包化といって、1回分ずつお薬をまとめたり、お薬カレンダーやピルケースを利用したりして、きちんとお薬を飲めるように工夫します。
ただ、このお薬の整理については在宅訪問の際だけに行っているサービスではなく、通常の薬局の窓口でも行っております。お困りの際はお気軽にかかりつけ薬局にご相談ください。
まずはかかりつけ薬局へ相談を
お薬カレンダーに1回分ずつお薬をまとめて、正しく飲めるように工夫 |
在宅訪問はどのような方が対象となるのでしょうか?
岩元先生
居宅において療養している患者であって通院が困難な人ということになっております。
どのようにすればお願いできるのでしょうか?
岩元先生
在宅訪問を希望される場合は、主治医や担当ケアマネジャーに相談するか、お気軽にかかりつけ薬局の薬剤師にご相談下さるとよろしいかと思います。
費用はどれくらいなのでしょうか?
岩元先生
薬剤師の在宅訪問は介護保険の給付対象となります。自己負担金は1回につき350~500円です。また、介護保険の認定を受けてない方は、医療保険で同様のサービスを受けることができます。疼痛緩和のための特殊な薬が処方されている場合には、1回につき100円ご負担いただきます。他にはお薬カレンダーや交通費などご請求させていただくこともあります。ご契約される際によくご確認ください。お薬代などは医療保険の対象となり別途必要となります。
※1 ジェネリック医薬品・薬剤師の在宅訪問のステッカー |
どこへでも来ていただけるのでしょうか?
岩元先生
原則、患者さん宅から薬局までの距離が16㎞以内でなければならないことになっております。
すべての薬局で対応してもらえるのでしょうか?
岩元先生
残念ながら、薬剤師が1人しかいないなどの理由で、在宅訪問に対応できない薬局もございます。在宅訪問を実施しているかどうかは、直接お尋ねいただくか、ステッカー(※1)が掲示されているかどうかで判断していただければと思います。
お薬について困ったことがあれば、かかりつけ薬局に相談すればよいのですね。
岩元先生
お薬をきちんと服用することができれば、それだけ体調も改善するはずです。きちんと服用できていないと充分な効果を得ることはできません。私共薬剤師は、お薬を服用される患者さんのお手伝いをさせていただきたいと考えております。お薬がきちんと服用できていない、たくさん余った薬がある、薬の服用について心配なことがある場合には、まずはかかりつけ薬局へご相談ください。