しっかりとした手洗いで感染予防 -国保でHOT情報2015年11月号-
国保でHOT情報では、これからの季節に流行するインフルエンザと、突然強烈な嘔吐・下痢が起きることが特徴のノロウイルスについて、治療法や予防法を独立行政法人国立病院機構鹿児島医療センターで小児科の吉永正夫先生に伺い、11月4日にお伝えしました。
流行前にワクチン接種を
インフルエンザの特徴について教えてください。
吉永先生
インフルエンザウイルスによって起こります。鹿児島での流行は、12月下旬から3月頃になります。潜伏期(病原微生物が侵入してから発病するまで)は1日~4日間、平均2日間です。38℃以上の急な高熱・頭痛・関節痛・筋肉痛などの症状が表れます。
感染経路と予防方法について教えてください。
吉永先生
咳やくしゃみなどからの飛沫(浮遊粒子)によって感染します。一部は接触感染があることも知られています。従って、流行時の外出はマスクを着用してください。外出先から帰ったらうがい・手洗いをすることです。最も大事なことは、流行前にワクチン接種を行うことです。
予防接種は、いつ頃受ければ良いでしょうか。
吉永先生
効果持続期間については、4~5カ月間というのが一般的と思います。発病予防効果は60から90%です。ただ、A型の防止効果は高いのですが、B型に対する効果は低いようです。発病しても重症になるのを予防する効果は高いとされています。
今年からワクチンの内容が変わったそうですが。
吉永先生
ワクチンの中に含まれるタイプが3種類から4種類に増えています。インフルエンザB型を1種類から2種類に増やしてあります。
インフルエンザの診断・治療はどういうものがありますか。
吉永先生
診断:症状と診察所見が重要です。迅速診断キットも用います。迅速診断キットは鼻からの拭い液で10分程度の検査でわかります。 治療:飲み薬・吸入薬・点滴と3種類あります。 参考:オセルタミビル(タミフル)1日2回5日間内服、ザナミビル(リレンザ)1日2回5日間吸入、ペラミミビル(ラピアクタ)1日1回1~2日間、ラニナミビル(イナビル)1回吸入
「流行時の外出はマスクを着用し、しっかりとうがい手洗いを」と話す吉永先生 |
インフルエンザと診断されたら、どういったことに気をつければ良いでしょうか。
吉永先生
安静にして、水分の補給を行います。治療を開始しても、けいれん・変なことを言うなどの異常行動がある、ぐったりしているなどの場合は、医療機関に相談してください。
環境消毒には消毒用アルコールの2度拭き
また、冬にかけて流行するノロウイルスについても教えてください。
吉永先生
ノロウイルスとは、わずかな量で感染する感染力の強いウイルスです。
感染経路:ウイルスの感染したものを食べる、吐物などの処理時に手を介して感染する、吐物等が乾燥して舞い上がり空気感染する、の3経路があります。
潜伏期:12時間から48時間です。
症状:突然の嘔吐・下痢です。症状は厳しいのですが、1~2日間続いた後、だんだん治まっていきます。
では、感染した時はどのように対処したらよいのでしょうか。
吉永先生
下痢や嘔吐が続くと、脱水症状を起こしやすくなります。吐き気の様子を見ながら、水分を摂取することです。症状が厳しい時は点滴します。
具体的な予防方法について教えてください。
吉永先生
食中毒の予防と接触・空気感染予防を行います。
食中毒予防:食品の十分な加熱と、使用した調理器具の十分な洗浄と消毒を行ってください。
接触・空気感染予防:吐物処理時には手袋・マスクを着用し、吐物が乾燥しないうちに処理します。
汚物処理をするときに気をつけることはありますか。
吉永先生
まず手袋をしてください。汚物を受けた床の消毒では、吐物ティッシュペーパーをかぶせ、塩素系消毒剤(次亜塩素酸ナトリウム)をかけ除去します。塩素系消毒剤で清拭、水拭きをします。汚物はビニール袋に密封して捨ててください。その後は、石鹸で十分に手洗いし、部屋を換気します。日頃からの手洗いが大切です。
消毒用アルコールでの消毒はいかがですか。
吉永先生
ノロウイルスに対しては、消毒用アルコールは塩素系消毒剤より効果が弱いとされてきましたが、塩素系消毒剤は刺激臭があること、環境を劣化させることから、環境消毒には消毒用アルコールの2度拭きも推奨され始めています。
手指消毒も流水での手洗いができない場合、消毒用アルコールが勧められています。