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第3回「社会活動編」人生100年時代の体づくり -教えて健康法-

第3回 社会活動編

  長寿国のひとつであるわが国において、いわゆる寿命の延伸のみならず、「健康上問題なく日常生活を制限されることなく生活できる期間」とされる健康寿命の延伸は重要な課題である。健康寿命の延伸のためには、身体を動かす活動を積極的に行うことや知的な刺激で脳の活性化を促す活動が推奨される。また、普段から食生活に気を配り、バランスの良い食事を心がけることも重要である。さらには、社会とのつながりを維持し、他者との交流や社会的な活動に参加することも健康寿命の延伸に有益となるでしょう。

 いくつか興味深い報告を紹介する。都市部や農村部を問わず、社会参加の習慣のない高齢者に比べて、社会参加の数が2つ以上の高齢者では要介護を発生するリスクが有意に低いことが報告されている(Ide K, et al. 2020)。また、習慣的な運動が要介護の発生リスクを減少させることにつながるとされているが、運動を一人で実施するよりもスポーツ組織に参加する等して仲間と実施するほうが、より要介護の予防効果が期待される(Kanamori S, et al. 2012)。さらに、一人で運動する人に比べて、家族や友人と一緒に運動することが多い人のほうが、主観的に感じている健康観が高いことが報告されている(Kanamori S, et al. 2016)。このように、運動そのものの効果に加えて、運動をきっかけとして、他者と交流する機会となったり、社会とのつながりが構築されたりすることで、心身の健康状態に対して良い影響をもたらすことが期待される。 「社会とのつながり」が損なわれることが加齢による心身の衰えの入り口となることが少なくない。例えば、一人暮らしで外出の機会が少ないと人と話をする機会が減ってしまい、脳への刺激が減少して認知機能の低下が懸念される。また、外出することが少なくなると、身体を動かす機会も減少し、筋肉や関節への刺激も減ってしまい、身体機能の低下を招く恐れが高くなる。日常生活において社会とのつながりが損なわれてしまうと、生活する範囲も限られてしまう。人と会ったり話をしたりする機会が減ると、認知的および精神的な刺激が少なくなり、このような環境の変化は日常でのさまざまな活動の意欲や食欲の低下を招き、心の健康や栄養状態にも負の影響を及ぼしてしまう。不活動や低栄養の状態が続くと、身体機能の衰えを招いてしまい、心身の健康状態を損なうことにつながる。 このように、社会とのつながりが損なわれることをきっかけとして、ドミノのようにさまざまな機能の低下が連鎖的に生じてしまう恐れがある(図)。多くのドミノが倒れてきた後で、すべてのドミノを起こすことは非常に困難となるため、ドミノが倒れてこないように予防することが重要となる。健康寿命の延伸を目指し、こころと身体の健康を維持するためにも、楽しみながら積極的な社会交流や社会活動に取り組むことが推奨される。家族や友人と会う機会を定期的に設けたり、地域でのイベントに出かけてみたり、興味のある教室やカルチャースクールに参加してみることもよい。 とくに、コロナ禍では社会交流や社会活動を大きく制約せざるを得ない状況であったため、その影響が甚大であった高齢者も少なくないであろう。感染症のリスクが高い時期や不安の強い場合は、メールや電話、さらにはテレビ電話やオンラインでのコミュニケーション機能なども活用して、人とのつながりを保つことも有用であろう。

 

 

プロフィール

氏名 牧迫 飛雄馬

現職

 ・鹿児島大学医学部保健学科理学療法学専攻 教授

 ・国立長寿医療研究センター予防老年学研究部 客員研究員

 ・放送大学 客員教授

学歴

平成13年 国際医療福祉大学保健学部理学療法学科卒業(理学療法士)

平成15年 国際医療福祉大学大学院博士前期課程修了(修士(保健学))

平成21年 早稲田大学大学院博士後期課程修了(博士(スポーツ科学))

専門領域

健康・スポーツ科学、介護予防、地域リハビリテーション、老年学

専門理学療法士(生活環境支援理学療法・基礎理学療法)、認定理学療法士(介護予防)

 

2023-09-29
カテゴリー: 教えて健康法 

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