人生100年時代の体づくり ~オーラル編 第1回~ -教えて健康法-
第1回 オーラルフレイル
人生100年を健康に生きること、健康寿命を延長させることを目的に今回からオーラルフレイル・口腔機能低下症の予防と対策について3回シリーズでお伝えいたします。
オーラルフレイルとは
健康と要介護の間の状態である虚弱(フレイル)という言葉が一般的に使用されるようになってきました。しかし、全身のフレイルが始まる初期段階にみられるお口の筋力や機能低下「オーラルフレイル」(口の機能の衰え)については未だ周知されていません。オーラルフレイルの主な初期症状は〝咬みづらい、飲み込みにくい、むせる〟です。また〝舌や頬を頻繁に咬むようになった、入れ歯の調子が最近おかしい〟といった日常生活の中でふと気づく程の症状もオーラルフレイルの初期状況ですが、私生活にあまり困らないため放置してしまい、見過ごされることが少なくありません。自覚症状に乏しく〝気づき〟が遅れた結果、オーラルフレイルから、口腔機能低下症または摂食嚥下機能障害を引き起こすこともあります。
ここ数年間、COVID-19の感染拡大予防のためのマスク着用による口腔乾燥、社会的交流の場の減少、会話や会食の控えなどによってオーラルフレイルが進行している方が増加していることが危惧されています。
オーラルフレイルが全身的なフレイルの前兆であることや、要介護や死亡リスクが2倍以上になることからも、オーラルフレイルの初期段階で早期発見することは非常に重要です(図1)。
オーラルフレイルと全身への影響
図2に示すとおり、オーラルフレイルの進行が低栄養や全身疾患の悪化、認知症の発症リスクを上昇させることが分かってきました。特に、嚥下機能が低下していると、誤嚥性肺炎や窒息をおこすリスクが高くなるため、命に直結する問題となります。
介護現場からは「〇〇を食べたいと施設利用者が言っていますが、食べさせていいですか?とろみをどのくらいつけたらいいですか?」といったご相談を受けることが多くなりました。希望するものを食べることができない。または、食形態自体が正しいのか分からないために手探りで食事療法を行うしかないなど、日々困惑しながら介護されている方も多いのではないでしょうか。医療資源の地域差もあり、相談窓口がどこかも分からないといった実情もあると推察されます。
前述のとおり、口腔機能の評価や食事形態などが不明で悩んでいる場合、相談窓口として歯科を選択することも一つの手段です。もし、お困りのことがあれば、歯科へ相談してみましょう。次号では実際に歯科で行う検査や口腔機能低下症について掲載予定です。
プロフィール
氏名 福岡宏士(ふくおか ひろし)
略歴
平成18年3月福岡歯科大学 卒業
平成18年4月~平成19年3月福岡歯科大学附属病院 冠橋義歯学分野
平成19年4月~平成23年3月福岡歯科大学大学院歯学研究科歯学専攻博士課程
平成23年4月~平成29年9月福岡歯科医院勤務
平成29年10月福岡歯科医院開業(親子継承)
役職
平成25年4月~平成29年3月薩摩郡歯科医師会 広報担当理事
平成29年4月~平成31年3月薩摩郡歯科医師会 在宅・口腔ケア担当理事
平成31年4月~薩摩郡歯科医師会 広報、在宅・口腔ケア担当理事
令和元年6月~鹿児島県歯科医師会 医療介護連携委員会 委員
令和5年4月~薩摩郡歯科医師会 会計