よくある質問

薬剤師に聞く健康のいろは ~お薬手帳編~ -教えて健康法-

「ポリファーマシーとお薬手帳について」

ポリファーマシーとは

 ポリファーマシーという言葉を聞いたことがありますか?ポリファーマシーは、「複数」を意味する「ポリ(poly)」と「調剤」を意味する「ファーマシー(pharmacy)」からなる造語ですが、単に服用する薬が多いことだけではなく必要以上に多く薬が処方されていることにより、有害事象を起こしたり、きちんと薬が飲めなくなったりするなど薬に関連した問題につながる状態のことをいいます。

 薬が何種類以上処方されていたらポリファーマシーになるのかという疑問がわくと思いますが、その数について厳密な定義はありません。薬による有害事象の発現頻度が6種類以上で上昇するという報告があり(図1)、6種類以上をポリファーマシーの目安とされることが多いです。しかし、10種類の薬が処方されていてもそのすべてが必要不可欠な薬であり、特に問題なく服用できている場合がある一方、3種類しか処方されていなくても必ずしも必要不可欠とは言えない薬が処方されていたり、有害事象が起こってしまうなど、薬に関連した問題につながる場合もあります。したがって、最も大切なのは服用している薬の数ではなく、その薬の内容が適正かどうかという点です。

ポリファーマシーの背景と問題点

 一般的にポリファーマシーは高齢者で問題となることが多いと言われています。高齢者は生活習慣病をはじめとする慢性疾患を複数抱え、複数の医療機関にかかっていることも珍しくありません。1つの疾患に対する処方は少数であっても、それが2つ3つと重なることで全体の処方数が多くなってしまいます。それぞれの薬の間には相互作用(一般的に飲み合わせと言われます)により薬の効果を弱めてしまったり、有害事象が起こりやすくなってしまうことがあります。服用する薬が多くなるとそれだけ相互作用による影響を受ける可能性が高くなってしまいます。 また、高齢になると肝臓や腎臓など生理機能が低下し、薬の代謝(分解すること)や排泄(対外に排出すること)に時間がかかるようになるため、薬による作用を受けやすく有害事象が起こりやすくなります。以上より、薬が必要以上に多く処方されることで、薬に関連した問題につながるポリファーマシーの状態は、高齢者で起こりやすくなると考えられます。

ポリファーマシーの対策とお薬手帳

 ポリファーマシーと呼ばれる状態にならないためにはどのようなことに気をつければいいでしょうか。まずは、自分が服用している薬の全体が把握できるようにしておくことが大切です。医師から処方してもらう薬だけではなく、市販薬や健康食品(サプリメント)も相互作用に影響する可能性があるため、それらの情報も一緒に把握できるようにしておきます。そして、その情報をかかりつけ医やかかりつけ薬剤師とも共有するようにしてください。また、体調の変化や気になる症状があるときは記録するようにしてください。薬の量が変わったり、新しい薬が追加されたときは特に大切です。これらのことは、お薬手帳をうまく活用することでスムーズに行えるようになります(図2)。保険薬局で簡単に準備してもらえますので、まだ利用していない方はまずはお薬手帳を持つところから始めてみてください。 薬を服用していて気になる症状があった場合でも、自己判断で服用をやめたり、量を減らしたりすることは良いことではありません。まずはかかりつけ医やかかりつけ薬剤師に相談するようにしてください。その際にもお薬手帳を活用していただくことで情報をより正確に伝えることができます。

プロフィール

 

公益社団法人鹿児島県薬剤師会 薬事情報センター 所長
氏名 井上 彰夫

 

略歴

平成18年3月 広島大学医学部総合薬学科 卒業

平成18年4月 株式会社PMC企画ひまわり薬局 勤務

平成20年9月 有限会社ケーアイ調剤薬局 勤務

令和2年2月 公益社団法人鹿児島県薬剤師会薬事情報センター 所長

所属学会等

日本薬剤師会、日本病院薬剤師会、日本医療薬学会、日本腎臓病薬物療法学会、 日本社会薬学会、日本医薬品安全性学会

 

2024-10-10
カテゴリー: 教えて健康法 

カテゴリ:教えて健康法

入札情報

受付・支払日
入札情報
制度やしくみ
統計情報
広報関係

ページトップへ戻る

インフォメーション

【所在地】

鹿児島県市町村自治会館
〒890-0064 鹿児島市鴨池新町7-4

鴨池南国ビル
〒890-0064 鹿児島市鴨池新町6-6
Copyright© 鹿児島県国民健康保険団体連合会 All Rights Reserved.