人生100年時代の体づくり ~オーラル編 第3回~ -教えて健康法-
第3回 「オーラルフレイルの予防と対策・口腔機能低下症の治療法」
前々号、前号ではオーラルフレイルと口腔機能低下について連載してきました。前号で示したとおり、オーラルフレイルは口腔機能低下の症状がみられる状態を指し、歯科受診時に口腔機能の精密検査を行い、該当すると『口腔機能低下症』の診断となります。今回はオーラルフレイルの予防と対策、口腔機能低下症と診断された場合の治療法について、ご紹介します。
オーラルフレイル予防および対策には口腔周囲筋のトレーニング(口腔機能訓練)が有効です。低下した筋機能を日常生活で問題ないレベルまで回復することを目的とします。口腔機能低下症と診断された場合も口腔機能訓練を中心に治療を行います。効果を実感できるまでの期間の目安は約1ヶ月です。まずは1ヶ月を目標に継続しましょう。「〇〇が食べたいな」とおっしゃっている方に対しては「〇〇が食べられるように頑張りましょう」とお声掛けすることでモチベーションの向上につながります。また、吹き戻し(笛状の玩具)を用いた運動も効果があるとされています。ご家族・介護スタッフも一緒に楽しめて口腔機能訓練ができると継続しやすいです。筋機能が回復した後も、機能維持に努めるために口腔機能訓練を継続することも重要です。
重度の口腔機能低下症の場合は口腔機能訓練に加え、摂食機能療法を実施します。具体的には、嚥下造影検査を医科の先生方に依頼したり、その結果をふまえて栄養士と連携して食形態を変更したり、歯科では咀嚼・嚥下しやすいように義歯形態を修正したりと、多職種連携して摂食機能療法を行います。実際に食事する姿を観察し、問題点を抽出する『食事観察』も有効な手段です。食事時の姿勢、食べるスピード、口に含む食べ物の一回量を観察し、ご本人やご家族、施設職員に助言や指導を行って、誤嚥予防と機能維持・向上を目指していきます。
人生100年時代の歯科の役割
日本歯科医師会は、これまで歯科医療を「生活を支える医療」と位置づけていましたが、2022年3月には「人生をもっと豊かに、もっと楽しく」と新たなスローガンを掲げ、オーラルフレイルや口腔機能低下症について啓発活動を行っています。また、鹿児島県歯科医師会でも啓発用パンフレットおよび紙芝居を作製し、口腔機能の大切さや訓練法について周知を図っています(図2)。
最後に、歯科医師会はこれからも〝人生100年時代の体づくり〟として、歯、口腔、口腔機能の維持・向上等を通じて多職種で連携し、健康寿命の延伸に貢献して参りますので、よろしくお願い致します。
プロフィール
氏名 福岡宏士(ふくおか ひろし)
略歴
平成18年3月福岡歯科大学 卒業
平成18年4月~平成19年3月福岡歯科大学附属病院 冠橋義歯学分野
平成19年4月~平成23年3月福岡歯科大学大学院歯学研究科歯学専攻博士課程
平成23年4月~平成29年9月福岡歯科医院勤務
平成29年10月福岡歯科医院開業(親子継承)
役職
平成25年4月~平成29年3月薩摩郡歯科医師会 広報担当理事
平成29年4月~平成31年3月薩摩郡歯科医師会 在宅・口腔ケア担当理事
平成31年4月~薩摩郡歯科医師会 広報、在宅・口腔ケア担当理事
令和元年6月~鹿児島県歯科医師会 医療介護連携委員会 委員
令和5年4月~薩摩郡歯科医師会 会計