健康づくりのための運動 -第1回教えて健康法-
変化するイメージが効果を生む
なぜ運動するのですか?目的はそれぞれだと思います。中でも多くの方が“健康のため”と答えるのではないでしょうか。健康な時は多くの場合、運動は大事だがなかなか実行されず、支障が出てから大切さを再認識するのではないでしょうか?是非運動する際には目標を掲げ「こうなりたい」「○○の数値がこの位まで変化するように」など変化するご自身のイメージを持ち、取り組むと効果も出やすいと思います。今まで運動を行っていない方が頑張りすぎて痛みを発症したり、ケガをしたりするケースも少なからずあります。無理をせず、少しずつ運動の強度を上げていく必要があります。そのために、正しい知識と実施方法・フォームを身に付けていただきたいと思います。
フレイル・ロコモ・サルコペニアとは
健康に関し、最近よく耳にする言葉としてフレイル、ロコモティブシンドローム(ロコモ)、サルコペ二アといった言葉があります。フレイルとは、心身機能の低下(虚弱状態)を表す言葉でさまざまな機能がその対象となります。
図1 に示すように、
- 身体的フレイル
- 精神的・心理的フレイル
- 社会的フレイル
などが考えられます。
ロコモとは、体を動かすための運動器(神経、関節・骨、筋肉)の衰えが原因で移動機能(立つ、歩くなど)の低下により、日常生活に支障をきたしている状況です。
サルコペニアとは、加齢や疾患により筋肉量が減少し、筋出力が出にくい状態です。それに肥満状態が加わったサルコペニア肥満の方も、年齢が高くなるにしたがって多くなっている状況です。
それぞれの基準は図2、図3、図4に示します。
これらの健康に支障をきたす状況を予防・改善するためにそれぞれの年齢、身体や疾患の状況に応じて身体活動を増やす必要があります。身体活動とは運動に限らず、日常生活において身体を動かすことです。
運動要素として有酸素運動、筋力運動、柔軟運動、調整力・巧緻力・敏捷性などありますが、今回は3回にわたり有酸素トレーニング、筋力トレーニング、柔軟性トレーニングのポイントをお伝えします。
図1 引用:国立長寿医療研究センター 副院長 荒井秀典 フレイルの多面性より |
図2 フレイル評価基準 2016年度国立長寿医療センター研究時 |
図3 ロコチェック | 図4 サルコペニアAWGS(アジア)基準 |
「ニコニコペース」でのウォーキングが効果的
有酸素トレーニングの代表としてはウォーキングがあります。
ウォーキングのポイント
- 正しい姿勢で、できる範囲でおなかをへこまして(ドローイン)背すじを伸ばす。
- 肘を軽く曲げ、肩を中心に腕を振る。特に後ろに肘を引く意識で。
- 後ろ脚の膝をしっかり伸ばし、最後に爪先でしっかり蹴るようにする。
- 前に振り出した脚はつま先が真っすぐ~15度程度開く範囲でかかとから着く。
より効果的に実施したい場合、運動強度50%程度で実施することがさまざまな疾患の予防・改善や脂肪燃焼に効果があると言われています。目安として息が少し弾んでいるが隣の方と話ができるくらいの状態“ニコニコペース”が50%運動強度の目安になります。
もう少し正確な目安を知りたい方は運動中の脈拍を図りましょう。
50%運動強度の算出方法は、
目標心拍数=(220-年齢-安静時心拍数)×0.5 + 安静時心拍数
産出された数字の±5 拍程度を目標にしましょう。
例)60 歳、安静時心拍数80 拍/分の場合
(220-60-80)×0.5+80=120±5 目標心拍数は115~125 拍/分
時間は最初5~10 分程度無理のないところから始め、40 分程度、週当たり3~5日を目標に実施しましょう。
運動中や運動後に膝や腰などに痛みや違和感が出た場合や1週間以上筋肉の痛み(筋肉痛)が続くような場合は運動を中止し、専門家に相談しましょう。
プラス10分の運動でリスクを低下
ウォーキングができない、時間がない方は階段昇降、その場足踏み、日常の中でこまめに歩き回るなど少しでも体を動かす機会を増やすようにしましょう。
国の施策としてプラス10 運動を推奨しています。プラス10 とは、現在よりも10 分だけ多く体を動かす時間を作りましょうということです。そうするだけでもさまざまなリスクを低下させることが示唆されています。( 死亡リスク2.8%、生活習慣病3.6%、がん発症3.2%、認知症・ロコモ8.8%低下)
無理がない範囲で始めましょう。
柳田 豊(やなぎた ゆたか) プロフィール
【職歴】
昭和64年 | 鹿屋体育大学 体育・スポーツ課程卒業 |
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同年(平成元年) | (株)ニチガスクリエート入社 アーバンウェルネスクラブ エルグ |
平成21年1月 | リセット・プラス設立 コンディショニングトレーナーとして活動 |
【資格】
- 健康運動指導士 (健康・体力づくり事業財団認定)
- ヘルスケアトレーナー(中央労働災害防止協会認定)
- ホリスティックコンディショナー(JHCA 認定)
- ストレッチポールアドバンストトレーナー(JCCA 認定)
- キネシオテーピング療術家(キネシオテーピング協会認定)
- 肥満予防健康管理士(日本肥満予防健康協会認定)
- 貯筋運動指導者(健康・体力づくり事業財団認定)
- その他(G ボール、スタビライゼーションベーシック)
【実績】
鹿児島県健康づくり運動指導者協議会 会長