体幹を安定させて美しい姿勢を獲得しましょう-第8回教えて健康法(運動編)-
体幹を安定させて美しい姿勢を!
長年運動指導に携わっていますと、無意識のうちに、いろいろな場面でヒトの動作分析をしてしまう癖がついてしまいます。
例えば、ウォーキングしているあの男性、お尻周りの筋に左右差がありそう・・・とか、信号待ちのあの女性、脚をクロスして荷重に偏りが・・・腰痛・肩こり大丈夫かな?といった感じです。
何をみてそのように分析しているかというと、「体軸」の安定です。接地している足元から、頭の先まで、スムーズに力が伝わっているかどうか、つまり「軸」が取れているかどうかを評価しています。
ある時、友人二人でマシントレーニングをしていた女子高生が見事なまでに体軸が安定しているので、思わず、「部活は何かな?」と声を掛けました。
二人は、「合唱部です。」と笑顔で答えてくれました。
競技スポーツを想像していた私は、面食らうと同時に、「なるほど」と頷かされました。
体幹を安定させる筋肉の使い方は、発声で使うそれと相通じるところがあったのです。
彼女たちは、合唱の練習によって、自然と体軸を整える術を身に着けていたんですね。
加えて、トレーニングの際に重要な呼吸法に関しても、彼女たちには釈迦に説法。
何の指導も受けずに、見事に安定した姿勢をとれたのも納得です。
今回のテーマは、体幹のインナーマッスル群。
体幹を安定させて、美しい姿勢を獲得しましょう。
コルセット・パラシュート・ハンモック
最近、テレビや雑誌の特集でもよく取り上げられている「体幹トレーニング」や「コアトレーニング」。
腹筋であれば真っ先にイメージするのは、シックスパックに割れた腹直筋(ふくちょくきん)ですが、軸の安定に大切なのは、その深層にある筋群なのです。
体幹部を構成している代表的なインナーマッスル群は、腹横筋(ふくおうきん)、横隔膜(おうかくまく)、骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)そして多裂筋(たれつきん)です。
姿勢の安定の他に、内臓の働きをサポートする役割も担っているので、これらの筋肉の働きが鈍ると、姿勢の歪みだけでなく、便秘や下痢といった腸の働きにも影響を及ぼします。
一般社団法人日本コンディショニング協会会長で、自身もコンディショニングトレーナーとして全国で活躍されている有吉与志恵氏は、これらのインナーマッスル群を、腹横筋が「コルセット」、横隔膜を「パラシュート」、骨盤底筋群を「ハンモック」とわかり易く解説しておられます。(図-1)
お腹を凹ませるイメージでコルセット(腹横筋)を締めて腹圧が高まると、自然にパラシュート(横隔膜)が開きます。
加えて、お尻の穴を締めるイメージでハンモック(骨盤底筋群)を意識することで、背筋群である多裂筋にもスイッチが入ります。
これらの一連の動きで体幹が安定すると、足の裏で地面をしっかり掴むことができ、軸が整うのを感じることができます。
コルセット・パラシュート・ハンモックをしっかりと連鎖させた姿勢維持が大切です。
動作時のポイント
体幹が安定した状態だと、走る、投げる、跳ぶといった、様々な動作時に、床からの反発力(床反力)をしっかりともらうことができます。
しかし、猫背や反腰のように、動作に入る前の姿勢が悪いと、上手く力を伝えることができません。
スクワットを例にとりましょう。
(是非、実際に3つの動作を行ってみてください。)
図-2に示す通り、安定した立位姿勢の状態(図左)からニュートラルの姿勢でスクワットを行うと、重心が安定し、スムーズに床反力を受けることができますが、猫背の姿勢からスクワットを行うと、重心が踵よりに移動し、背中側へ押されるような感覚に陥ります。
逆に反腰の状態からだと、つま先荷重となり背中側から押される感覚に陥り、体軸の安定が図れません。(図-2)
コルセットの役割をする腹横筋の収縮は、合唱部に入った気分で、「あっ、あっ、あっ」と連続で発声練習すると意識できます。
そうすると、自然とパラシュート(横隔膜)が開きますので、最後は、太ももにボールを挟むようなイメージを持って、お尻の穴を軽く締めてみましょう。
足の裏全体で地面をつかむ感覚を意識することが出来るはずです。
桑原祐一(くわはら ゆういち) プロフィール
健康運動指導士/ヘルスケア・トレーナー
【学歴】
鹿児島県立川内高等学校 卒業
鹿児島大学教育学部 保健体育科 卒業
同大 大学院教育学研究科 修了
【現職】
株式会社ニチガスクリエート
アーバン・ウェルネス・クラブ エルグ 副支配人