成人期のメタボや糖尿病対策と歯科保健について -教えて健康法(オーラル編第1回)-
成人期のメタボや糖尿病対策と歯科保健について
歯周病とは、学童期の歯ブラシ不良による「歯肉炎」から俗に 歯槽膿漏 と呼ばれる「歯周炎」を含めた総称で、20歳以上の男女のうち70%以上の国民が罹患している「感染症」と言われております。口の中には300種類以上の細菌がいます。むし歯菌は産生する酸で歯を溶かし「むし歯」を作り、また、歯周病菌は産生する毒素によって歯ぐきを腫らし、歯を支えている骨を溶かし、歯を失ってしまう他に直接的もしくは間接的に全身に関与します。歯周病は、「脳卒中」「心筋梗塞」「糖尿病」の他に「認知症」「誤嚥性肺炎」「リウマチ」「早産・低体重児出産」にお口の中の細菌(歯周病菌)が関連しているとの報告もあります。また、メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満に合わせて、高血糖・脂質異常・高血圧などの生活習慣病の危険因子を併せ持った状態です。これらの危険因子を放置すると動脈硬化が進み、「脳卒中」「心筋梗塞」「糖尿病」などの命にかかわる病気が発症する確立が非常に高くなります。多くの調査の結果より糖尿病や肥満の人に歯周病が多く、それが重症になりやすいことがわかっています。
メタボリックシンドロームは、運動や食事に気を付けることによって、内臓脂肪を減少させることで、病気を予防することができ、様々な研究から、自分の歯でしっかり噛んでゆっくり食事することが肥満の予防につながることが明らかになっています。
糖尿病患者に歯周病の治療をすることにより、血糖値に改善がみられたとの報告もあり、糖尿病と歯周病には因果関係があることが報告されております。
上記の図は糖尿病と歯周病の相関関係であり、歯周病が悪化することにより噛む力が低下もしくは、残る歯が少なく、噛み応えのある食品の摂取が困難になることで 高血糖につながり糖尿病の悪化をたどる。また、糖尿病の進行により免疫抵抗力の低下によって歯肉の腫れ、歯周病菌が増殖することによって歯周病が悪化することを表しています。
メタボリックシンドロームの要件である内臓脂肪型肥満・高血糖・脂質異常・高血圧に食生活が深く関与しております。また、バランスのとれた食生活を送るためにもしっかりと噛めるお口の健康が絶対的に必要となります。
できるだけ、負の連鎖によってバタバタ倒れつづけるドミノを止めるためには、上にあるドミノ つまり 「むし歯」「歯周病」のドミノを倒さないようにすることが大切です。
我々は、日々多くの細菌にさらされており、カラダに侵入した細菌は、たくさんの兵隊(白血球、免疫による生体防御反応)が守ってくれます。しかし、兵隊が働かなかったり、お口の中の歯周病という戦場で戦っていると、他の臓器で戦争が起こると、応援が遅れてしまいます。また、糖尿病などで兵隊自体の働きが弱くなると善玉菌にでさえ負けてしまい「易感染性宿主」となってしまいます。
高齢者の死因で最も多いのは肺炎です。特に「誤嚥性肺炎」と呼ばれるものは、通常、胃に流れ込まなければならない つば(唾液)が気管支や肺に入り込むことが原因となります。
つまり、お口の中が、「むし歯菌」「歯周病菌」でいっぱいだとしたら、肺に間違えて入り込んだ つば は細菌がいっぱいということとなります。
次号で 高齢期の口腔ケアについては医療連携介護の担当者が詳しく説明いたしますが、「むし歯」「歯周病」予防および進行抑制のために かかりつけ歯科医院をみつけ、定期的な口腔ケアをすることが大切です。
門松 秀司 プロフィール
公益社団法人鹿児島県歯科医師会 理事
医療法人 門松歯科医院 院長 門松 秀司
平成19年8月鹿児島大学大学院卒業
平成20年4月 日置市伊集院町にて「医療法人門松歯科医院」勤務