第2回 「ストレスチェックと働く人のメンタルヘルス」-教えて健康法 メンタルヘルス編-
ストレスは気づきにくい
わたしたちにかかるストレス要因はひとつではありません。複数の要因が重なって、また、一人ひとりの受け止め方によってストレスの強さは異なります。ストレスには個人差があり、あなたにとってたいしたことはなくても、他の人にはとてもつらいストレスになることもあります。
また、ストレスは当人に必ずしもストレスとして自覚されているわけではありません。
働く人のストレスチェック
働く人の心身の健康の確保対策として、国は、2015年12月から、企業にストレスチェック制度の導入を法制化し、義務づけることにしました。
常時50人以上の労働者を雇用する企業では「ストレスチェック」を、年に1回は実施することが事業主に義務づけられています。
「ストレスチェック」は、ストレスに関する57項目からなる質問に回答し、自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査です。(図1)
目的はストレスへの気づき
ストレスチェックは、メンタルヘルス不調を未然に防止する一次予防を目的として位置づけられています。働く人のストレスの状況を定期的にチェックし、その結果から、自分自身のストレスに気づき、ストレスをためすぎないように自分自身でコントロール(対処)するセルフケアに活かすことです。
また、高ストレスで医師による面接指導が必要と判断された人には、面談を受けるよう勧奨するなど、不調者に早く気づき、適切な治療へとつなげたり、働き方への配慮を行うことなどが挙げられます。
当センターでは、法施行後からこれまで年間約160余りの事業所から委託を受け、延べ13万人余りの「ストレスチェック」を実施してきました。
あなたの心の健康度をチェックしてみましょう
このように、ストレスは、当人に必ずしもストレスとして自覚されている場合ばかりでないため、客観的にみる心構えが大切です。
そこで、誰でも回答できる簡単な十項目の心の健康度チェックを図2に示してあります。質問に回答し、ご自身の心の健康度をチェックしてみましょう。(図2)
また、なぜそのように回答したのかを振り返ってみると、ストレスの気づきにもつながります。
職場の環境改善とチームの支え
また、「ストレスチェック」にはもう一つ重要なアプローチがあります。それは、集団集計の分析から職場の環境そのものに働きかけ、職場にあるストレス要因を改善するというものです。
では、職場でのストレスの強度はどのようにして決まるのでしょう。
仕事のストレス要因として、①「仕事の量的負担」、②「仕事のコントロール(裁量権や自由度)」、の大小が挙げられます。(図3)
また、ストレスを緩和する要因として、③「上司の支援」、④「同僚の支援」等があります。(図4)
例えば、仕事の量的負担が高い状況であっても、上司や同僚の支援が高ければストレスが緩和されることがわかっています。
「仕事が多いからストレスはどうにもならない」とあきらめず、この4つの要素について今一度見直してみましょう。仮に仕事の量がコントロールできないのであれば、仕事の優先順位をつけるようにしたり、周囲が適切にサポートできる体制を立てるといった対策によりストレスは軽減させることができます。
偉業は「個人」ではなく「チームワーク」で創出される
どんな仕事でも「個」でできることには限界があります。例え独立して商売に成功している人であっても、多様な人が関わって商売が成り立っているのではないでしょうか。あるいは、家族の理解や地域の協力に支えられている場合もあるかもしれません。
それぞれの役割や多様な人々との出会いとチームワークのうえに生み出されていることを再認識し、さらに、連携や関係づくりが強化されると、健康の確保と生産性の向上に良い効果を生むことと思います。
そのためにもまずは、こころの健康状態について正しく認識するために「ストレスチェック」から始めてみてはいかがでしょうか。
そして、その結果から、改善策や解消法を検討してみると、次のステップにつながることと思います。
次回は、セルフケアの一環として自律神経を整えるストレッチやリラクセーション等についてご紹介します。
執筆者
鹿児島県民総合保健センター
所長 桶谷 薫