第5回 睡眠とメンタルヘルス ~睡眠の質を高めるポイント~ -教えて健康法 メンタルヘルス編-
現代人は睡眠不足
日本人の睡眠時間は世界で最も短いといわれています。(表1)
加えて、コロナ禍の外出自粛や加速するデジタル化など、環境や生活の変化から睡眠のリズムが崩れてしまったという人は少なくないのではないでしょうか。
睡眠不足は、短期的には全身の倦怠感やパフォーマンスの低下をまねき、自律神経のバランスを崩してしまいます。
自律神経が乱れると、「朝起きられない」、「寝ても疲れがとれない」、「夜なかなか眠れない」などの症状につながり、睡眠不足が負債のようにたまると、生活習慣病やがん、認知症、うつ病などのリスクが高まることがわかっています。
質の良い睡眠とは質の良い睡眠とは
適切な睡眠時間には個人差があるものの、6時間以上8時間未満が平均的といわれています。
自分の睡眠時間が適正かどうかを判断する目安のひとつに「日中の眠気が起こらない」ということが挙げられます。
しかしながら、この「日中の眠気」は毎日感じていると自覚しづらくなってきます。たとえば睡眠時無呼吸症候群の人は、いびきや呼吸が止まることで睡眠の質が落ち、日中に居眠りをしてしまうのですが、約半数の人は「日中の眠気はない」と答えており、寝不足感だけを頼りに自分の睡眠を評価すると危機感が薄れてしまう可能性があります。
セルフチェック
「眠気」以外で自分の睡眠を評価する方法として、「平日の平均睡眠時間と、土曜日(休日前)の睡眠時間の差」を調べる方法があります。休日に思いっきり寝たときに、平日との睡眠時間の差が3時間以上あれば睡眠が足りていない可能性が高いといわれています。
より良い睡眠のために
より良い睡眠のためには、「量」と「質」と「リズム」、この3つを整えることが重要です。
睡眠の質がいくら良くても、量が少なすぎると健康を害します。睡眠の絶対量は必要です。
また、次の3つのポイントについて意識することは効果的だと言われています。
①「体温勾配」
眠気は体温が上昇した後下降するときに生じやすいといわれています。この体温勾配をより活用するために、日中に運動をしたり、寝る1時間ほど前に40度前後の入浴をすることで体温を高め、それが下がることを利用して眠気を促します。
②「光」
人間の眠りのバイオリズムの一つとして、メラトニンというホルモンの関与が知られています。メラトニンは、朝、光を浴びることによって体内で生成が開始され、夜寝る時間帯に血中メラトニン値がピークに達し、それによって睡眠のスイッチが入ると言われています。そのため、「朝決まった時間に起きて朝日を浴びること」、そして、「夜は明るい光を浴びないようにする」などの工夫が睡眠に関係が深いといわれています。
③「自律神経を整えるオンとオフ」
自律神経を整えるためには、昼間は体や頭を「アクティブモード」で活動的に、そして夜間には体や心を「リラックスモード」にするといった規則正しい生活リズムを意識することが肝心です。
「睡眠薬」と「アルコール」
「睡眠薬」に対する偏見はいまだに根強く、睡眠薬を飲むよりは「アルコール」を飲んで寝たほうがいいのではないかと考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、「アルコール」は依存的になってやめられなくなったり、慣れてくると量がどんどん増えてきたりします。しかも、「アルコール」は眠りを浅くし、気持ちを沈み込ませるような薬理作用もあります。「アルコールは不眠の解消にはけっしてプラスにはならない」ということを知っておくことが大切です。しかし、「アルコール」は依存的になってやめられなくなったり、慣れてくると量がどんどん増えてきたりします。しかも、「アルコール」は眠りを浅くし、気持ちを沈み込ませるような薬理作用もあります。「アルコールは不眠の解消にはけっしてプラスにはならない」ということを知っておくことが大切です。
「眠れない」は要相談
抑うつ症状の中でも「食欲」と「睡眠」は重要です。食欲と睡眠は、人が生きていくためにどうしても必要な基本的欲求です。
「眠れなく」なったり、「食欲がなく」なったり、逆に「眠りすぎ」たり「食べ過ぎ」たりと、人間としての基本的な欲求に障害がでてきているときには注意が必要です。
こうした状態が一週間以上続いたときには「医療機関を受診する」など、専門家に相談することが重要です。
執筆者
鹿児島県民総合保健センター
所長 桶谷 薫