血管内皮を守るための食その3-第6回教えて健康法(栄養)-
前号では、「日本人の食事摂取基準」をもとに何をどれだけ食べたらいいかを考えました。
今回は、健診結果で何らかの異常がある人は、どう食べたら良いかを考えます。糖尿病なら、糖の量を抑える、高血圧なら塩分量を考えるなど食の基準は健診結果によって異なります。その基準は、肥満症の場合は、「肥満症診療ガイドライン」、糖尿病の場合は、「糖尿病治療ガイド」、高血圧の場合は「高血圧治療ガイドライン」など、各種ガイドラインがその根拠となります。
ここでひとつ、前号でお知らせした内容で訂正があります。
総エネルギーを決める時にBMIによって目標体重を算出する際、「実現可能な目標として、BMI25~30未満の人は、今の体重から5%減、BMI30以上の人は、10%減を目指します。」とかきました。しかし、新しい肥満症診療ガイドラインでは、BMIの区分も変わり、「BMI25~35未満の人は3%以上減、BMI35以上の人は、5~10%減を目指す」と変わりました。わずか3%の体重減少でも空腹時血糖や血圧等が改善されることが分かったのです。
健診データで一日の食品の種類と目安の量が変わります
資料1をご覧ください。
この資料は各種ガイドラインの食事療法をわかりやすく整理したものです。健診結果に応じて食品の基準量(g)が分かるようになっています。
一番上の「異常なし」は、健診結果に異常のない方の場合で、前号でお話した食事摂取基準をもとに考えれば良い方です。健診結果に異常値がある方は、異常なしの方と食品の種類は一緒ですが、量が変わります。
たとえば、BMI(25~35未満)、糖尿病(高血糖)、高血圧の方で考えてみます。
まず資料1の縦軸①健診結果のBMI25以上35未満に該当します(1⃣)。さらに糖尿病(高血糖)(2⃣)、高血圧(3⃣)も当てはまります。すべてをチェックしたら、丸がついたところをそのまま上の③「私の食品量」の欄に書き込んでいきます。
2⃣の丸がついた項目を見ると、糖尿病(高血糖)は、果物類と砂糖類についています。果物に含まれている果糖や、砂糖類は、吸収が早いため血糖を上げる性質があります。血糖をコントロールするインスリンというホルモンを大切に使うために制限が必要なのです。果物だけgではなくkcalです。糖尿病(高血糖)の方は、ここが厳しく80kcalとなっています。1gの炭水化物は4kcalですから80kcalというのは20gの糖質のことをいいます。みかんは、糖度が12%位ですから、一個100g位のみかんだと、2個で80kcal位になります。砂糖は異常のない方20gに対して10gです。
3⃣高血圧の人は、まず、海藻類が30gとなっています。海藻は、海の植物なのでナトリウムを含んでいるため控えます。海藻って体にいいと思っていますが、実は体にいい物って人によってちがうのですね。それから、食塩が3~6g未満です。塩は水を呼ぶ性質があるので、塩分をたくさん摂ると血液量が増えてしまい、血液量を一定にするため血圧が上がるので、それを予防するためです。
純アルコールは、糖尿病(高血糖)、高血圧の方共通で、20gとなっています。日本酒だと1合くらい、焼酎(25度)なら100ccです。「えっ!たったそれだけ?」とがっかりされる方も多いかも知れませんね。
油や穀類は、「個人でまちまち」とあります。前号の早見表を参考にしてください。
健診結果は食べ物ととても関係が深い・・・鹿児島県の食の背景は?
鹿児島県は、全医療保険者33万2000人の健診データで、全国でBMI8位、血圧(収縮期)6位、糖尿病2位となっています。その背景を知るためによく食べている食品を家計調査で見たのが資料2です。国保連合会の保健師さんが作成しました。
腹囲やBMIが高いのはさつま揚げや油、高血圧はしょう油やドレッシングの塩分、糖尿病は甘いお菓子や飲料と関連していることが理解(予想?)できます。
血管内皮を守るために
血管内皮は、毎日必要な栄養素を食品から摂ることで守ることができます。また、血液データに異常値が出てきたら、関連する栄養素が入っている食品のとり方を少しだけ制限したり、注意していただくことで修復することができます。
3回にわたり「血管内皮を守るための食」について書かせていただきました。
ありがとうございました。
中村 千恵子(なかむら ちえこ) プロフィール
【プロフィール】
管理栄養士
保健活動を考える自主的研究会事務局
長野県千曲市在住
【主な活動歴】
- 近隣市町村、他県での保健活動(母子・乳幼児健診、成人・特定保健指導)
- 兵庫県尼崎市での職員保健指導、国保ヘルスアップ事業、特定保健指導
- 三菱電機関連事業所社員の保健指導
- 宮城県亘理町、福島県会津若松市等保健指導アドバイザー など